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バイクの前輪駆動・2WDはなぜ少ない?理由や実例・将来性などを徹底解説
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バイクの前輪駆動・2WDはなぜ少ない?理由や実例・将来性などを徹底解説

バイク 前輪駆動

クルマがFF・FR・AWDと多彩な駆動方式を持つ中で、バイクはほぼ後輪駆動に限られています。

前輪駆動や二輪駆動のバイクは本当に存在しないのか、あったとしてどんな仕組みで動くのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、後輪駆動が当たり前とされてきた構造的理由や、実在する2WDバイクの事例などを解説していきます。

電動化によって変わりつつある最新動向も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

前輪駆動のバイクが普及しない理由

冒頭でも述べたとおり、市販されているバイクの多くが、後輪のみを駆動輪とする方式を採用しています。

バイクで前輪駆動が採用されにくい理由のひとつは、エンジンのレイアウトによる部品点数の増加が懸念されるからです。

バイクのエンジンは、車体中央に搭載されるケースが多いため、前輪へ動力を伝達する機構は、操舵する前輪の動きを妨げない形で組み込まなければなりません。

エンジンからの動力を迂回させる複雑な構造は部品数の増加を招き、車体の重量や燃費、製造コストの面で悪影響を及ぼす恐れがあります。

後輪駆動であれば、操舵しながら駆動させる難しさがないため、構造上の問題は大幅に小さくなります。

後輪駆動をそのまま維持する場合と比べて、実用上のメリットが複雑さやコストを上回りにくかったことが、前輪駆動の普及を妨げてきた要因といえるでしょう。

実在する前輪駆動・2WDバイク

後輪駆動が主流のバイク市場ですが、これまで前輪駆動や2WD(二輪駆動)を採用した車両がまったく存在しなかったわけではありません。

ここでは、実在する前輪駆動・2WDバイクの代表的な車種を紹介します。

バイク黎明期の前輪駆動車 メゴラ

最初に挙げる前輪駆動バイクは、1921年から1925年頃にかけてドイツで製造されたメゴラ(Megola)です。

メゴラの特徴は、前輪そのものの中にエンジンを内蔵したインホイール構造にあります。

エンジンとホイールが直結されているため、チェーンやシャフトによる動力伝達ロスがなく、効率的な駆動を実現したバイクです。

レース用に製造された最終モデルは最高速度140km/hに達し、1924年のドイツ選手権で優勝を果たすほどの走行性能を誇っていました。

現存するメゴラは世界でわずか10台程度とされており、そのほとんどはコレクターや博物館が所有しています。

老舗メーカーRokon(ローコン)の2WDバイク

アメリカのバイクメーカーRokon(ローコン)は、現在も2WDバイクを製造・販売し続けている数少ないメーカーのひとつです。

そのラインナップのひとつであるScout(スカウト)は、208ccのKohler製単気筒4ストロークエンジンを搭載し、フロントとリアの両輪をフルタイムで駆動します。

スペックは7馬力(3,600rpm時)、車体重量は約99kgで、幅広のトラクタータイヤ(8×12×25インチ)による安定性が特徴です。

農作業や林業、山岳地帯のアクセスなど、一般的なバイクでは踏み込めない悪地を走れる本格作業車として活躍しています。

Christini(クリスティーニ)の機械式AWDダートバイク

実際にレースでも使用されている車種としては、Christini(クリスティーニ)の機械式AWD(オールホイールドライブ)ダートバイクが挙げられます。

クリスティーニのAWDシステムとは、フレームとヘッドチューブ内部に封入されたシャフトとギアの組み合わせで、効率的に前輪へ動力を伝えるものです。

電気系統を使わない機械式であるため信頼性が高く、動力損失は全体の15%未満に抑えられています。

アメリカを含む20カ国以上での販売実績に加え、4年以上にわたる国際レースでの活躍が信頼性を裏付けている、二輪駆動のオフロードバイクです。

二輪駆動のもうひとつの形「サイドカー」

一般的なサイドカーは後輪駆動の1WDですが、一部の特殊モデルには後輪+側車輪を駆動する2WDが採用されています。

ここからは、サイドカーに関する基礎的な知識や、これまで紹介してきたバイクと異なる駆動力分配の仕組みについて解説していきましょう。

サイドカーとは

サイドカーは、19世紀初頭のヨーロッパ(フランス・イギリス)で誕生した乗り物です。

オートバイ1台では難しかった多人数乗車や大量の荷物輸送を安価に実現したいという発想から生まれ、やがて屋根付きの側車やトラックの荷台のような形態も登場します。

3名の人員を輸送できる機動力を持つことから、戦時中では偵察や人員輸送に広く活用されました。

サイドカーを運転するのに必要な免許は自動二輪車の免許区分で、排気量が401cc以上の場合は大型自動二輪免許が必要となります。

後述するデュアルドライブサイドカー(双輪駆動式サイドカー)の場合は、普通自動車免許が必要です。

任意保険はどちらも「側車付オートバイ」としての契約になります。

サイドカーの駆動方式

一般的なサイドカーは後輪のみが駆動するため、加速時や減速時にハンドルが引っ張られる独特の操縦特性が生じます。

この「ハンドルのとられ」を解消するために開発されたのが、デュアルドライブサイドカー(双輪駆動式サイドカー)と呼ばれる車種です。

デュアルドライブサイドカー(双輪駆動式サイドカー)の駆動方式を大きく分けると、サイドカータイプとトライクタイプの2種が挙げられます。

サイドカータイプのデュアルドライブでは、後輪と側車輪のトルク配分をおおむね2対1とし、駆動力の中心を車両重心に近づける工夫がなされています。

一方、トライクタイプではベベルギアを使用した1対1のトルク配分が採用されており、後輪をオフセットした配置で自然な運転特性を得る仕組みです。

2WDバイクの今後

これまで解説してきたとおり、現在の市場には前輪駆動のバイクはほとんど見られません。

2WDバイクも数少ないのが現状ですが、電動化の技術がその状況を変える可能性があります。

電動バイクは2WDを実現しやすい

搭載したバッテリーを動力源とする電動バイクは、2WD仕様を実現しやすいと言われています。

その代表的な理由は、インホイールモーターとトラクション制御技術の進化です。

インホイールモーターの採用

電動バイクの2WD化で注目されている技術が、インホイールモーターです。

ホイールのハブ(車軸中心部)にモーターを内蔵する方式で、これまでに開発されている2WD仕様のEバイクにおいても、前輪と後輪にモーターが組み込まれています。

従来、2WD仕様のEバイクは小規模メーカーが中心でしたが、大手メーカーによるコンセプトEバイクも登場しており、今後の展開が期待されています。

トラクション制御技術の進化

インホイールモーターの2WDバイクでは、前輪がスリップした際の転倒は、ライダー自身による回避が難しいとされています。

その問題を解決するために必要とされるのが、前輪のスリップを抑制するトラクション制御システムです。

そういったなかで、2017年に発表されたある研究によれば、前後輪に定格500Wのインホイールモーターを搭載した2WD電動バイクに、ECUによるトラクション制御を実装することで、低摩擦路面での車輪空転を効果的に抑制できることが確認されています。

2WD電動バイクの安全を確保するためには、トラクション制御のさらなる進化が求められるでしょう。

すでに示されている2WDバイクの新モデル

大手メーカーも、次世代の2WDバイクをコンセプトレベルで示し始めている点に要注目です。

現時点ではいずれも量産・発売に至っていませんが、以下のようなモデルが登場しています。

ホンダ「EV OUTLIER Concept」

ホンダは2025年10月に開催されたジャパンモビリティショー2025において、電動二輪のコンセプトモデルEV OUTLIER Concept(イーヴィー アウトライヤー コンセプト)を世界初公開しました。

前後両輪にインホイールモーターを採用した2WD構成で、電動車に許されるレイアウトの自由さを生かしたダイナミックかつ低プロポーションのスタイルが特徴です。

このモデルはあくまでコンセプトモデルであり、2030年以降における二輪車の新しいあり方を提案する位置づけとなっています。

FELO-EVの新型レジャーバイク

中国発の電動バイクメーカーFELO(フェロ)テクノロジーは、2024年9月の重慶モーターサイクルショーにて、1982年のホンダ「モトラ」を彷彿とさせるオフロードスタイルの新型レジャーバイクを発表しました。

既存モデルのM壱をベースとしており、フロントホイールにインホイールモーターを搭載した前輪駆動を採用していると見られています。

国内での価格・販売時期は未定ですが、日本にもFELO製品の代理店が存在しており、今後の国内展開が注目されます。

まとめ

公道を走行する一般的なバイクに前輪駆動が普及してこなかった背景には、エンジン位置の制約から来る構造上の複雑さと、コスト増大に見合う実用メリットの乏しさがありました。

ですが、Rokonの作業バイクやChristiniのオフロードバイクなど、2WDが備える悪路への有利性によって開発や研究が進んだ車種も存在します。

近年では、電動化技術の進化によって、ホンダやヤマハといった大手メーカーがコンセプトモデルで2WD電動バイクの姿を示しています。

特殊用途にとどまっていた2WDバイクも、今後は一般ライダーに広がっていく可能性があります。